リアルなベース音源は、実際の楽器の音を録音したデータを元に音を作るサンプリング方式が一般的です。しかしIK Multimedia社のMODO BASS 2は「フィジカル・モデリング」という技術を採用しています。
フィジカル・モデリングは楽器の物理的な構造や振動をコンピュータ上で再現することで、実際の楽器に近いサウンドを作り出す技術です。
MODO BASS 2 CSはこのフィジカル・モデリングによって、高音質でリアルなベースサウンドを無料で手に入れることができます。
以下の表のようにバージョンの違いで価格や収録内容が変わるため、ユーザーが求める内容と予算に合わせて選択ができます。
(アフィリエイトプログラムを利用して商品を紹介しています)
■バーションの比較
機能 | MODO BASS 2 CS | MODO BASS 2 Special Edition |
MODO BASS 2 |
---|---|---|---|
参考価格 | 無料 | 税込16,990円 | 税込33,990円 |
フル機能 | × | 〇 | 〇 |
パターン数 制限 |
〇 | × | × |
フレットレス対応 | × | 〇 | 〇 |
パターン インポート |
× | 〇 | 〇 |
モデル名 | MODO BASS 2 CS | MODO BASS 2 Special Edition |
MODO BASS 2 |
---|---|---|---|
Fretless Jazz | × | × | 〇 |
Fretless Bass Man | × | × | 〇 |
Studio Upright | × | × | 〇 |
Rockabilly | × | × | 〇 |
Horn Bass | × | × | 〇 |
Punk Bass | × | 〇 | 〇 |
Fusion J-Bass | × | × | 〇 |
Aluminum | × | × | 〇 |
Imperial Bass | × | × | 〇 |
Metal Bass | × | × | 〇 |
'60s P-Bass | 〇 | 〇 | 〇 |
'70s P-Bass | × | 〇 | 〇 |
'70s J-Bass | × | 〇 | 〇 |
Modern J-Bass | × | × | 〇 |
Devil Bass | × | × | 〇 |
Bass Man 5 | × | × | 〇 |
Rick n' Bass | × | × | 〇 |
Studio Bass | × | × | 〇 |
Violin Bass | × | × | 〇 |
Thunder Bass | × | × | 〇 |
Japan Bass | × | × | 〇 |
Flame Bass | × | × | 〇 |
ベースモデル総数 | 1 | 4 | 22 |
https://www.ikmultimedia.com/products/modobass2/index.php?p=info
無料版のMODO BASS 2 CSでは「60s P-Bass」が含まれており、指弾き、ピック弾き、スラップ奏法が利用できます。
この記事ではMODO BASS 2 CSの導入方法から詳細な使い方を解説します。インストール手順からスタンドアローン・DAWでの使用方法のほか、各セクションの詳細などを説明しています。
- 1. MODO BASS 2 CSのインストール手順
- 2. スタンドアローン(MODO BASS 2 CS 単独で使用)
- 3. DAWのプラグイン呼び出しで使用
- 4. 各セクションの説明
1. MODO BASS 2 CSのインストール手順
MODO BASS 2 CSをインストールするにはIK Multimedia製品の管理ツールである「IK Product Manager」が必要です。このツールはIK Multimedia製品のダウンロード・オーサライズ・アップデートを一元的に管理するためのものです。
1.1 IK Product Managerのダウンロード
IK Product Managerをダウンロードするためには、まず以下のURLへアクセスします。
リンク先のある「TRY FREE」をクリックします。
表示された画面で使用するOS(WindowsまたはMac)のダウンロードリンクをクリックします。
ここからはWindwosの場合を例に進めていきます。
ダウンロードした圧縮ファイルを解凍ソフトで解凍し、Install IK Product Manager.exeを実行します。これでIK Product Managerがインストールされて起動します。
1.2 IK Product Managerのアカウント作成
「CREATE ACCOUNT」をクリック後、IK Product Managerのアカウント作成をします。
画面右側の新規ユーザーにある「REGISTER」をクリックします。
ユーザーネームやパスワードなど指定された項目をすべて入力した後に「REGISTER」をクリックします。
完了後に以下のメッセージが表示されます。入力したメールアドレス宛にアカウントのアクティブ化するためのURLが送られてくるので、このURLをクリックすることでアカウントの登録が完了します。
1.3 インストーラーのダウンロード
IK Product Managerに作成したアカウントでログインします。
IK Product Manager画面右上にあるPREFERENCES(歯車のアイコン)をクリックしてDownloads Folderを設定します。この設定を忘れると、この後インストールするときにエラーが表示される場合があります。
「Manage My Products」を選択後、MODO BASS 2の「Install」をクリックします。
1.4 インストール
インストーラーのダウンロード終了後、自動的にインストーラーが起動します。画面の指示に従ってインストールを進めます。このときインストール先のフォルダを変更したい場合は「Browse...」をクリックし、任意のフォルダを指定してください。
インストールが完了後に「Finish」をクリックしてウィンドウを閉じます。
AuthorizedとInstallが緑色で表示されたらインストールは完了です。
2. スタンドアローン(MODO BASS 2 CS 単独で使用)
2.1 MODO BASS 2 CSの起動
インストールしたMODO BASS 2 CSのアイコンをダブルクリックします。
起動すると画面が表示されます。
2.2 MODO BASS 2 CSのオーディオ設定
オーディオ設定では音声入出力・音の遅延・音質などを調整できます。
画面右上の歯車アイコン(①)から「Audio/MIDI(②)」 タブをクリックして各種設定画面を表示します。
Audio/MIDIタブでは「Technology」「Output Device」「Channel」「MIDI」などを設定します。詳細は下の設定項目の表を参照してください。
設定項目
番号 | 項目 | 説明 |
---|---|---|
1 | Technology | 使用するオーディオドライバーの種類を選択 |
2 | Output Device | 使用するオーディオインターフェースのデバイスを選択 |
3 | Channel | チャンネルの入力設定(LeftとRightで個別に設定可能) |
4 | Sample Rate | オーディオのサンプルレート設定(通常は44100Hzや48000Hzが使用) |
5 | Buffer Size | バッファサイズ(音の遅延量)の設定 小さくしすぎるとドロップアウトしやすくなり、逆に大きくしすぎるとレイテンシが大きくなるため、作業環境のバランスを考えて設定 |
6 | Driver Settings | ドライバーの設定ソフトを起動 使用するオーディオインターフェイスによって起動ソフトが変わる |
7 | MIDI Input | 使用するMIDI入力デバイスを指定 |
8 | MIDI Channel | MIDIチャンネルの設定 OMNI選択時はすべてのMIDIチャンネルの入力を受け付ける |
3. DAWのプラグイン呼び出しで使用
DAWのプラグインでMODO BASS 2 CSを呼び出す場合、DAW側のプラグイン検索リストにMODO BASS 2 CSを入れないと使用できません。設定方法はDAWによって変わるため、使用するDAWに合った設定をしてください(下記の記事ではCakewalk by BandlabとStudio Oneでの設定方法をまとめて紹介しています)
Cakewalk by Bandlabの場合
Studio Oneの場合
4. 各セクションの説明
4.1 MODEL:ベースモデルの選択
MODEL(①)ではベースモデル(②)を選びます。CSでは60sP-Bassのみ選択でき、右上に鍵アイコンが付いたモデルは使えません。
4.2 PLAY STYLE:指弾き・ピック弾き・スラップ
PLAY STYLE(①)ではベースの演奏スタイルを細かく設定します。
指弾き・ピック弾き・スラップなど、演奏スタイル(②)に合わせてパラメータ(③)が用意されており、指使いやピッキングの強さやピックの角度、スラップの強弱などを調整できます。
例えば、指弾きでは人差し指と中指を交互に使うか、どちらか一方を使うか選べるほか、弦を指で触れる強さも調整可能です。これらの設定で実際に演奏しているかのようなリアルなニュアンスを表現できます。
MODO BASS 2 PLAY STYLE 設定一覧表
パラメータ | 説明 | 値 |
---|---|---|
プレイ スタイル |
ベースの演奏スタイルを選択 | Finger/Pizzicato・Slap・Pick (エレキベースのみ) |
Finger | ||
STROKE | 指弾きの指使いを選択(Fingerのみ) | Alternate・Index・ Middle |
TOUCH | 弦へのタッチの強さを選択 | Soft・Normal・ Hard |
PLUCK | 弦をピッキングする位置を選択 | ネック側 - ブリッジ側 |
Pick | ||
STROKE | ピックのストロークパターンを選択 | Alternate・Down・ Up |
SCRATCH | ピックの角度を選択 | Normal・Hard |
PLUCK | 弦をピッキングする位置を選択 | ネック側 - ブリッジ側 |
Slap | ||
STROKE | スラップとプルの演奏方法を選択 | Auto・Slap・Pull |
THRESHOLD | 自動プルが反応するベロシティの閾値を設定(STROKEがAutoの場合のみ) | 0 - 127 |
共通 パラメータ |
||
MUTING | 右手による弦のミュート量を調整 | 0 - 100 |
LET RING | 弦の余韻を残すかの選択 | On・Off |
FINGERING | 左手の運指方法を選択 | First position・ Easy・ Nearest |
OPEN STRING | 開放弦を含む演奏をする場合にOnにする | On・Off |
DETACH NOISE | 指をフレットから離す際に発生するノイズの量を調整 | 0 - 100 |
SLIDE NOISE | フレット間をスライドする際に発生するノイズの量を調整 | 0 - 100 |
4.3 STRING:弦の種類でサウンドを変える
STRING(①)はベースの弦に関する設定(②)をします。
弦の本数(4・5・6弦)や弦の種類(ラウンドワウンド、フラットワウンド)のほか、ゲージ(太さ)・弦の古さ・弦高などを調整できます。これらのパラメータを調整することで、明るくクリアなサウンドから温かみのある落ち着いたサウンドまで、さまざまな音色を作り出すことができます。
弦はベースサウンドの要となる要素のひとつです。STRINGで細かく設定を調整することで、よりリアルで表現力豊かなベースサウンドを生み出せるでしょう。
MODO BASS 2 STRING画面 設定一覧表
パラメータ | 説明 | 値 |
---|---|---|
FINGERBOARD | 指板の種類を選択 | Fretted・Fretless |
STRINGS | 弦の本数を設定 | 4・5・6 |
DROP | 最低音弦を1音下げて調弦するか選択 | On・Off |
ACTION | 弦高を設定 | Low・Medium・High |
TYPE | 弦の種類を選択 | Roundwound・Flatwound |
GAUGE | 弦のゲージを選択 | Light・Medium・Heavy |
AGE | 弦の古さを選択 | New・Broken-in・Old |
A4 REFERENCE | A音の基準周波数を設定 | 430.0 Hz - 450.0 Hz (0.1Hz単位) |
4.4 ELECTRNICS:ピックアップで音作り
ELECTRONICS(①)ではエレキベースのピックアップやプリアンプに関する設定(②)をします。
2つのピックアップスロットがあり、搭載するピックアップの位置を自由にカスタマイズできます。またプリアンプもパッシブとアクティブを選択可能で、アクティブの場合は3バンドEQでサウンドを調整できます。
ピックアップの位置・プリアンプの選択によって、ベースサウンドは劇的に変化します。
MODO BASS 2 ELECTRNICS画面 設定一覧表
パラメータ | 説明 | 値 |
---|---|---|
BRIDGE Pickup |
ブリッジピックアップの種類とボリュームを設定 | 60s P SC (シングルコイル)のみ |
NECK Pickup |
ネックピックアップの種類とボリュームを設定 | 60s P SC (シングルコイル)のみ |
CIRCUIT | パッシブまたはアクティブエレクトロニクスシステムを選択 | Passive/Active |
BASS | アクティブサーキットの低音域を調整 | 0~10 |
MIDDLE | アクティブサーキットの中音域を調整 | 0~10 |
TREBLE | アクティブサーキットの高音域を調整 | 0~10 |
TONE | パッシブサーキットのトーンを設定 | 0~10 |
PIEZO | ピエゾピックアップのボリュームを設定 | 非対応 |
4.5 STUDIO:アンプとエフェクトで音に磨きをかける
STUDIO(①)では、アンプやエフェクトペダルを使用して音色をカスタマイズできます。
画面上のアンプやペダルの画像をクリック(②)することで、それぞれの設定画面(③)にアクセスできます。
アンプ設定
AMP MODEL(①)から「Solid State」または「Tube」を選択すると、対応する設定項目(②)が表示されます。
ペダル設定
各ペダルには音色に特定のエフェクトを加える効果があります。ペダルを変更したい場合は、左上のペダル(①)をクリック後にSTOMP MODEL(②)から別のペダルを指定するとできます。
STOMP MODEL一覧表
エフェクト名 | 説明 | 効果 |
---|---|---|
Octaver | 原音に対して1オクターブ下の音を生成 | 重厚なサウンド、低音を増強。 |
Distortion | 音に歪みを加える | aggressiveなサウンド、激しい表現。 |
Chorus | 音に揺らぎを加える | 広がりや奥行きを演出。 |
Compressor | 音量を均一化する | 安定感のあるサウンド。 |
Delay | 原音を遅らせて繰り返す | 残響効果や空間表現。 |
Envelope Filter | 入力信号の強弱でフィルター効果を変化させる | ファンキーなサウンド、ダイナミックな表現。 |
Graphic EQ | 7バンドのグラフィックイコライザー | 周波数帯域ごとの細かい音質調整。 |
4.6 PATTERNS:MIDIパターンでベースラインを作成
PATTERNS(①)では、ジャンル・セクション・プレイスタイル・長さ・キー・シグネチャー別に整理された1000以上のMIDIベースパターンがあり、ユーザーは必要なベースパターンを簡単に見つけることができます。
左側のフィルター(②)を使用して検索を絞り込み、結果は右側の列(③)に表示されます。選択したパターンはDAWのMIDIトラックにドラッグ&ドロップすることで、簡単に取り込みができます。また、画面中央下の再生アイコン(④)でパターンを視聴することも可能です。
4.7 CONTROL:CC・ピッチホイール・キースイッチなどによる制御
CONTROL(①)ではMIDIコントローラーやキーボードの機能を活用して演奏の幅を広げられます。
ノブやボタンのほか、ピッチベンド・モジュレーションホイールを使い、さまざまな演奏テクニックを操作でき、キースイッチで奏法や弦の選択を瞬時に切り替えられます。
また、演奏音域外のキーにキースイッチを割り当てることで小型のキーボードでも豊かな表現が可能です。
デフォルトの設定
■CC (コントロールチェンジ): 連続的な値(0-127)で音量やエフェクト量を調整。
■KS (キースイッチ): 鍵盤で特定機能のオン/オフや値の送信。VALUE列と連動。
■PW (ピッチベンド):ピッチベンドホイールで音の高さを変化。
■Latch:クリックするとオン/オフ切り替わる。
パラメータ | 説明 | TYPE | VALUE | LATCH |
---|---|---|---|---|
PIZZICATO / FINGER | エレクトリックベースの場合はFINGERプレイスタイル、ダブルベースの場合はPIZZICATOを有効にする | KS | C#0 | |
PICK | PICKプレイスタイルを有効にする | KS | D#0 | |
SLAP | SLAPプレイスタイルを有効にする | KS | F#0 | |
BEND | 現在のノートのベンドを制御する(範囲は±4半音) | CC | 5 | |
SLIDE | 現在のノートのスライドを制御する(SLIDE RANGEノブで設定された範囲) | PW | ||
VIBRATO | 現在のノートのビブラート量を制御する(VIBRATO RANGEノブで設定された範囲) | CC | 1 | |
HAMMER ON/PULL OFF | ハンマーオン/プルオフアーティキュレーションを有効にする | KS | C0 | Off |
LEGATO SLIDE | レガートスライドアーティキュレーションを有効にする | CC | 65 | Off |
MUTING | 右手のパームミュート量を制御する | CC | 9 | Off |
GHOST MODE | ゴーストノートのアーティキュレーションを有効にする | KS | A#-1 | Off |
HARMONICS | ハーモニクス(オクターブ)のアーティキュレーションを有効にする | KS | F0 | Off |
LET RING | LET RING機能を有効にする(デフォルトではCC #64に割り当てられている) | CC | 64 | Off |
INDEX STROKE | FINGERプレイスタイルではインデックスストローク、PICKプレイスタイルではダウンストローク、SLAPプレイスタイルではスラップを強制する | KS | C#-1 | Off |
MIDDLE STROKE | FINGERプレイスタイルではミドルストローク、PICKプレイスタイルではアップストローク、SLAPプレイスタイルではプルを強制する | KS | D#-1 | Off |
LEFT HAND POSITION | ネック上の左手の位置を制御する | CC | 4 | |
FORCE C STRING | 関連する弦の使用を強制する | KS | C-1 | Off |
FORCE G STRING | 関連する弦の使用を強制する | KS | G0 | Off |
FORCE D STRING | 関連する弦の使用を強制する | KS | D0 | Off |
FORCE A STRING | 関連する弦の使用を強制する | KS | A-1 | Off |
FORCE E STRING | 関連する弦の使用を強制する | KS | E0 | Off |
FORCE B STRING | 関連する弦の使用を強制する | KS | B-1 | Off |
PLUCK POSITION | 選択したプレイスタイルのプラック位置を制御する | CC | 3 | |
CHORD MODE | コードモードを有効にする(コードモードではフレットロジック内で複数のノートを同時に弾くことが可能) | CC | 2 | Off |
STOP ON DETACH | 有効にすると、MIDI Note OFFで停止音を導入する | KS | G#0 | Off |
DB SLAP NOISE | ダブルベースをスラップモードで使用する場合、ネックを叩くときのノイズを発生させる | KS | C#1 | Off |
DB STOP STRINGS | ダブルベースをスラップモードで使用する場合、このキースイッチを押したら弦を停止する | KS | D#1 | Off |
MASTER VOLUME | マスター出力音量を制御する | OFF | ||
VIBRATO RATE | ビブラートレートを設定する(デフォルトではモジュレーションホイール、MIDI CC #1で制御) | 4.0 | ||
SLIDE RANGE | スライドの範囲を半音単位で設定する(デフォルトではピッチホイールで制御) | 2 |