オーディオエクスポートとは、DAWソフトウェア上で作成した音源をコンピューター上のファイルとして出力する機能です。
Cakewalk by BandLabのオーディオエクスポートでは、ミックスダウン後のファイル出力だけでなくトラックごとのファイル出力も可能です。さらにタスクキュー機能を使用することで、複数の設定に基づくファイル出力を一度の操作で実行できます。
この記事は、Cakewalk by BandLabのオーディオエクスポート機能に関する初心者向けの解説です。DTM初心者の方がオーディオエクスポートを理解し、活用できるようになることを目的としています。
- オーディオエクスポートの画面を開く方法と機能の概要
- オーディオエクスポートの設定詳細
- エクスポートレンジやタスクに関する設定
1. オーディオの書き出し(WAV, MP3)
Cakewalk by BandLabを用いたオーディオエクスポートの基本的な手順を説明します。ここでは完成した曲のミックスダウンについて、プリセットを用いて説明します。トラックごとの書き出しやバス書き出し、設定の詳細説明などは次の章で説明します。
1.1 オーディオエクスポート画面を開く
場所:「ファイル」>「エクスポート」>「オーディオ」
メニューバーの「ファイル」から「エクスポート」>「オーディオ」を選択し、オーディオエクスポート画面を開きます。
1.2 ミックスダウン(WAVE)でエクスポート
プロジェクトすべてのトラックを1つのオーディオファイルにまとめて出力するには、プリセットの「Entire Mix」を選択します。
このプリセットを使用するとファイルはWave形式(WAV)でサンプリングレート44.1KHz、ビット深度は24bitで保存され、高解像度のオーディオファイルが生成されます。
1.3 ミックスダウン(mp3)でエクスポート
WAVE形式でエクスポートする場合と同様に、全トラックを統合してmp3形式で出力するにはプリセットで「Entire Mix - MP3」を選択します。ファイルはMP3形式で保存され、エクスポート時に表示される「MP3エクスポートオプション」画面で、さらに詳細な設定が可能です。
2. オーディオエクスポートの設定詳細
オーディオエクスポート画面では、トラックごとの出力とミックスダウン後の音源出力が可能です。
さらに異なる設定ごとにタスクを作成してパッチ実行できるので、トラックごとの音源出力とミックスダウン後の音源出力を一度の操作で実行可能です。
項目 | 概要 | 詳細 |
---|---|---|
ファイル名と 保存場所 |
ファイル名・ 保存場所の設定 |
出力するファイル名と保存場所のデフォルト設定は「Audio Export」フォルダとなる。 タグを使用してプロジェクト名や出力するトラック名をファイル名として設定できる。カスタムの日付タグも使用可能。 |
形式 | ファイル形式の設定 | WAV・ MP3・ FLACなど、さまざまなフォーマットでエクスポート可能。 |
エクスポート対象 | エクスポート するソースを 選択 |
トラック・バス・クリップなど、エクスポートしたいオーディオのソースを選択可能 。 「トラック」はバスを経由せずに音源がバス前の状態でオーディオ化する。 「ミックス全体のトラック」はバスを経由した後の音がオーディオ化する。 |
ミックスしてレンダリング | トラック設定・オートメーションを使用するかなど | エクスポート時にトラックのミュート・ソロ・FX・オートメーションなどの設定を反映させるかを設定する 。 |
レンジ | エクスポート する時間範囲 設定 |
全プロジェクトまたは特定の時間選択に基づいてエクスポートする時間範囲を設定 。 トラック上に特定の範囲が指定されていない場合、プロジェクト全体が自動的にエクスポートされる。 範囲が指定されている場合はそのタイム選択範囲がエクスポートされる。 |
タスクをキューに追加 | エクスポートをタスク化 (パッチ実行) |
異なる設定ごとにタスクを作成してパッチ実行できる機能。 トラックごとの音源出力とミックスダウン後の音源出力を一度の操作で実行可能。 |
2.1 ファイル名と保存場所設定
ここでは出力するファイル名と保存場所を設定します。
デフォルトの保存場所はプロジェクトファイルと同じ階層にある「Audio Export」フォルダになっています。
タグを使った設定
ファイル名を固定する方法もありますが、タグを使用することで柔軟に設定することもできます。
具体的にはプロジェクト名をエクスポートするファイル名にしたり、出力するトラック名をファイル名として利用したりできます。特にトラックごとにファイル出力をまとめて行う場合には、トラック名タグを使用することがポイントです。
タグ設定画面上のタグボタンをクリックすると、ファイル名のところにタグが挿入されます。
カスタムの日付タグを使用することもできます。
タグによって生成されるファイル名は下の図の赤枠のところで確認できます。
2.2 保存形式の設定
ここではファイルの出力形式を指定します。下の図はファイルタイプを「Wave」にしたとき場合の例です。
項目 | 説明 |
---|---|
ファイル タイプ |
エクスポートするオーディオファイルの形式を選択(WAVやMP3など) |
サンプル レート |
オーディオファイルのサンプルレートを設定。 |
ディザリング | ビット深度を減らす際に発生するノイズを低減するための処理 例えば24bitで録音した音声を16bitに変換する時やミックスしたデータを24bit以下でエクスポートする時に使用 |
チャンネル フォーマット |
オーディオファイルのチャンネル構成を選択(ステレオやモノなど) |
ビット数 |
デジタルオーディオのビット数を設定。 |
バウンス バッファサイズ |
リアルタイムレンダリングが無効にされているとき、ミックスダウンに使用されるバッファサイズを指定。通常は「再生サイズ」を指定。 |
ファイルタイプをMP3に指定した場合、エクスポートを押した後に「MP3エクスポートオプション」が表示されます。
よく使用される設定例
CD制作
CDは16ビット/44.1kHzのステレオ音声が標準で、この設定を選ぶのが最適です。ディザリングは音質向上のための設定で、量子化ノイズ(雑音)を減らす効果があります。
項目 | 設定値 |
---|---|
ファイルタイプ | Wave |
サンプルレート | 44100 Hz |
ディザリング | Pow-r 2 |
チャンネルフォーマット | ステレオ |
ビット数 | 16 |
録音
録音する場合は、「録音」設定を用いてアナログ音をデジタル音声データに変換します。録音する音源と同じサンプルレートやビット数を選択することで、音質の劣化を防げます。
項目 | 設定値 |
---|---|
ファイルタイプ | Wave |
サンプルレート | 録音と同じ設定 |
ディザリング | なし |
チャンネルフォーマット | ソースに従う |
ビット数 | 録音と同じ設定 |
高音質
サンプルレートを高めると、高い音域もクリアにできます。ビット数を24ビット以上に設定すると、音の細かな表現力が向上し、音質が良くなります。
項目 | 設定値 |
---|---|
ファイルタイプ | Wave |
サンプルレート | 88200Hz または 96000Hz |
ディザリング | なし |
チャンネルフォーマット | ステレオ |
ビット数 | 24bit または 32bit |
MP3
インターネットで音楽を配信したり、音楽プレーヤーで聴く際には、音源を圧縮した「MP3」の設定が便利です。ビットレートを上げると音質は向上しますが、ファイルサイズも大きくなるため、トレードオフが存在します。192kbps以上が推奨されています。
項目 | 設定値 |
---|---|
ファイルタイプ | MP3 |
サンプルレート | 44100Hz |
ディザリング | なし |
チャンネルフォーマット | ステレオ |
ビット数 | 16bit |
ビットレート | 192kbps以上 |
2.3 エクスポート対象
ここではエクスポートの対象を選択します。主な内容は下の図の通りです。
ソースの種類
ここではトラックやバスなどが選択できます。「トラック」と「ミックス全体のトラック」の違いはバスを経由するかしないかで判断します。
前者はバスを経由せずに音源はバス前の状態がオーディオ化され、後者はミックス全体のトラックはバスを経由した後の音がオーディオ化されます。
2.4 ミックスしてレンダリング項目
ここではエクスポートする際にトラック設定やオートメーションなどを考慮するかどうかの設定を行います。
2.5 エクスポートレンジ
エクスポート画面を開く際にトラック上で特定の範囲を指定していない場合は「プロジェクト全体」がエクスポート範囲になります。
トラック上で範囲指定している場合は「タイム選択範囲」がエクスポート範囲に設定されます。エクスポート範囲を変更する場合は下の図にあるレンジから設定できます。
2.6 タスク
ここはエクスポート設定をタスク化するタスクキュー機能があります。
タスク化することでトラックごとの出力とミックス後の出力を一度の操作で実行したり、複数の時間範囲を一度の操作で出力したりすることができます。
実行するタスクにチェックを入れて「タスクの実行」を使うと一括ファイル出力ができます。
関連記事まとめ
Cakewalk by BandLabの使い方