Standard GuitarとStandard Bassは、sforzandoというサンプラー用のフリー音源です。sforzandoも含めてすべて無料で使用でき、かつクオリティの高い音源となっているのでおすすめです。
■sforzando
soundfont形式(.sf2)やsfz形式(.sfz)に対応した無料のサンプラー(soundfontやsfzは、楽器の音をデジタルデータとして保存するためのファイル形式)
Standard GuitarやStandard Bassはsforzando用の音源であり、DAWではsforzandoを使って音色を再生する
ただし、Standard Guitar・Standard Bassは両方ともDI録音(アンプを通さずに楽器の音を直接録音する方法)のため、音作りにはアンプシミュレーターなどのプラグインが必須になります。本ブログでは無料で使用できる高音質なアンプシミュレーター「TONEX CS」「AmpliTube 5 CS」について紹介する記事があるため、こちらもご参照ください。
■Standard GuitarとStandard Bassのサンプル音源
このサンプルはStandard Guitarに付属する「Standard_Guitar_Demo.mid」を使用しています(音源にStandard GuitarとStandard Bass、アンプシミュレーターはGuitar Rig 6とBIAS AMP 2を使用)
この記事ではsforzandoとStandard Guitar・Standard Bassの導入方法と使い方を解説します。インストールからDAWでの設定のほか、音色の切り替えなどを図解入りで説明しています。
- 1. 音源ファイルの入手
- 2. DAWで使用する
- 3. Standard Guitarの使い方概要
- よくある質問(FAQ)
- Q. 「Standard Guitar」と「Standard Bass」はどういった音源ですか?
- Q. sforzandoとは何ですか?
- Q. sforzandoのインストール時にVST2やVST3、スタンドアロンなど色々ありますが、どれを選べばいいですか?
- Q. Standard GuitarやStandard BassをDAWで鳴らそうとしても音が出ません
- Q. DI音源だと聞きましたが、どうやって音作りをしますか?
- Q. Cakewalk by Bandlabでsforzandoを認識しない場合の対処法は?
- Q. Standard Guitarのキースイッチとベロシティタイプの違いは?
- Q. Standard Guitarのキースイッチを使うときのポイントは?
- Q. キースイッチよりベロシティタイプを使うメリット・デメリットは?
- Q. Standard Bassはアンプシミュレーターが必須ですか?
- Q. どんなジャンルに向いていますか?
- Q. 使用時のCPU負荷や容量は大丈夫でしょうか?
- Q. 追加で必要なプラグインやエフェクトはありますか?
- まとめ
1. 音源ファイルの入手
1.1 sforzando(サンプラー)の入手
①下記のリンクにアクセスします。
リンク先のページ中央あたりまでスクロールし、「Download for free」をクリックします。
②「sforzando」から使用するOSの「Download」をクリックしてインストーラを入手します。
1.2 sforzando(サンプラー)のインストール
①ダウンロードしたインストーラファイルをダブルクリックして実行し、インストールを進めます。
②使用許諾契約書をよく読んでから「同意する」にチェックを入れて「次へ」をクリックします。
③インストール先を指定します。デフォルトのインストール先で問題なければ「次へ」をクリックします。
インストール先を変更したい場合は、「参照」をクリックして、任意のフォルダを選択します。選択後は「次へ」ボタンをクリックします。
④インストールするコンポーネントを選択します。「sforzando Standalone」はDAWを使わずにsforzando単体で起動する場合に必要です。
使用するOSとDAWに合わせて必要なコンポーネントにチェックを入れます。
64bit OSを使用している場合は「sforzando VST2 (64)」または「sforzando VST3 (64)」を選択します。Pro Toolsを使用している場合は、「sforzando AAX Native 64」にもチェックを入れます。選択した後は「次へ」をクリックします。
⑤プラグインのインストール先を選択し「次へ」をクリックします。
⑥インストールをクリックし、完了するまで待機します。
1.3 Standard Guitar(ギター音源)入手
■ファイルの場所
Standard Guitarのページへ行き、「Free Download」をクリックしてファイルを入手します。
1.4 Standard Bass(ベース音源)入手
■ファイルの場所
Standard Bassのページへ行き、「Free Download」をクリックしてファイルを入手する。
2. DAWで使用する
2.1 ファイルを解凍し任意のフォルダに格納
ダウンロードしたStandard GuitarやStandard Bassのファイルは「rar」形式となっているため、WinRARや7-Zipなどのソフトを使って解凍し任意のフォルダに格納します。このフォルダは音源読み込み時に使用します。
2.2 DAWから呼び出し可能にする(例:Cakewalk by Bandlab)
Standard GuitarやStandard BassをDAWで使用するにはsforzandoをDAWから呼び出せるように設定が必要です。ここからはCakewalk by Bandlabで使用する例を紹介します。
Cakewalk by Bandlabで使用する場合、VSTプラグインの読み込む設定が必要になります。詳細は下記のページにも記載しているため、この記事では抜粋して説明します。
①Cakewalkのメニューから「ユーティリティ」>「Cakewalk Plug-in Manager」を起動します。
②「VSTの設定」の「オプション」をクリックします。
③「追加」をクリックし、sforzandoのVSTをインストールしたフォルダを追加します。筆者の環境では先程インストールしたフォルダの「D:\VstPlugins\Plogue\sforzando」を追加して「OK」をクリック後に画面を閉じます。
④「VSTプラグインの検索」をクリックして完了まで待機します。
⑤検索が完了し、プロジェクトの画面に戻ると「Plugins」タブの「Instruments」のリストに「sforzando」プラグインが表示されているはずです(ここでsforzandoが2つ表示されているのは、インストール時にVST2・VST3の両方を選択していたため。どちらを使用しても構いません)
2.3 sforzandoに音源を読み込む
①トラックに「sforzando」を追加して、画面を開きます。
②「SETTINGS」タブをクリックし、User files pathに「Standard Guitar」と「Standard Bass」が含まれるフォルダを選択します。
③「Standard Bass」はこれで完了ですが、「Standard Guitar」はもうひと作業必要となります。
Standard Guitar.bank.xmlをドラッグ&ドロップし、少し待つと準備が完了します。
■音色の切り替え方法
「Standard Bass」に音色を切り替えたい場合、「INSTRUMENT」>「User」>「Ui_Standard_Bass_V2」で切り替えられます。
3. Standard Guitarの使い方概要
Standard Guitarはキースイッチにより奏法を切り替えるKSOP、ベロシティで奏法を切り替えるVSOPの2種類が用意されています。また、KSOP・VSOPともにXTrackingと名の付くINSTRUMENTファイルはダブルトラッキング以上のトラッキングで使用するファイルになります。
3.1 キースイッチタイプ(KSOP)
Standerd Guitarのキースイッチについて説明します。KSOPと名の付くファイルではキースイッチで奏法の切り替えが可能です。
例えば、C1のノートが実行されると、以降のノートは全て「サステイン ダウン」として演奏され、D#1のノートが実行されると「パームミュート ダウン」として演奏されます。
キースイッチタイプではベロシティを強弱表現として活用できるため、後で紹介するベロシティタイプと比較するとノートの入力の手間は増えますが、表現の自由度を増やすことができます。
■奏法切替①
キースイッチ | 奏法 |
---|---|
G#0 | ナチュラルハーモニクス |
A0 | ピッキングハーモニクス |
A#0 | ブラッシング |
B0 | フレットミュート |
C1 | サステイン ダウン |
C#1 | サステイン アップ |
D1 | サステイン オルタネイト |
D#1 | パームミュート ダウン |
E1 | パームミュート アップ |
F1 | パームミュート オルタネイト |
F#1 | ハンマリング プリング(自動検出) |
G1 | スライドダウン |
G#1 | スライドアップ |
A1 | スライドイン |
A#1 | スライドアウト |
■奏法切替②
キースイッチ | 奏法 |
---|---|
G6 | チョーキング |
G#6 | チョーキング(半音) |
A6 | チョーキング(1音) |
A#6 | ユニゾンチョーキング(半音) |
B6 | ユニゾンチョーキング(1音半) |
C7 | ポルタメント |
C#7 | サステイン(PBR12) |
D7 | サステイン(PBR24) |
D#7 | トリル(半音) |
E7 | トリル(1音) |
F7 | トリル(1音半) |
F#7 | トリル(2音) |
■MIDIノートイメージ
キースイッチで「サステイン ダウン」と「パームミュート ダウン」を切り替えながら演奏するMIDIノートのイメージです。
3.2 ベロシティタイプ(VSOP)
Standerd Guitarのベロシティについて説明します。VSOPと名の付くファイルでは演奏するノートのベロシティで奏法が決定します。
例えばC4を「サスティンダウン」で演奏するにはノートのベロシティを120~127で入力し、「パームミュート ダウン」で演奏するにはノートのベロシティを90~99で入力します。
キースイッチタイプと比べるとベロシティタイプではノートの入力の手間は減りますが、強弱の演奏表現の柔軟性も減ります。
■ベロシティと奏法の対応表
ベロシティ | 奏法 |
---|---|
120~127 | サステイン ダウン |
110~119 | サステイン アップ |
100~109 | サステイン オルタネイト |
90~99 | パームミュート ダウン |
80~89 | パームミュート アップ |
70~79 | パームミュート オルタネイト |
60~69 | ハンマリング プリング(自動検出) |
50~59 | スライドイン |
40~49 | スライドアップ |
30~39 | スライドダウン |
25~29 | ピッキングハーモニクス |
20~25 | ナチュラルハーモニクス |
10~19 | ブラッシング |
2~9 | フレットミュート |
1 | スライドアウト |
■MIDIノートイメージ
ベロシティで「サステイン ダウン」と「パームミュート ダウン」を演奏するMIDIノートのイメージです。
よくある質問(FAQ)
Q. 「Standard Guitar」と「Standard Bass」はどういった音源ですか?
A:「Standard Guitar」と「Standard Bass」は、sforzando(無料のサンプラー)で読み込んで使うギター・ベース音源です。どちらもDI録音(アンプを通さずに直接録音した音)を再現しており、フリーながら高品質なサウンドを得られます。
エフェクトやアンプシミュレーターで音作りを加えることで、ギターやベースのサウンドに仕上げることができます。有料音源に匹敵するクオリティとの声も多く、まずは無料で試したい方にとって最適な選択肢となっています。
Q. sforzandoとは何ですか?
A: sforzandoは、SoundFont(.sf2)やsfz(.sfz)形式のファイルを読み込める無料のサンプラーです。
音源ファイル(ギターやベースのサンプルなど)がsfz形式で配布されている場合、sforzandoを経由してDAWでその音色を利用できる仕組みになっています。非常にシンプルな構成で軽量かつ使い勝手が良いのが特長です。
Q. sforzandoのインストール時にVST2やVST3、スタンドアロンなど色々ありますが、どれを選べばいいですか?
A: スタンドアロンはDAWを使わずに単体で起動したい場合に必要です。通常はDAWで使用するため、VST2(64)もしくはVST3(64)が必須となります。
Pro ToolsユーザーはAAXにもチェックを入れましょう。基本的には64bit版のVSTプラグインを選択しておけばOKです。
Q. Standard GuitarやStandard BassをDAWで鳴らそうとしても音が出ません
A: まずは下記を確認してみてください。
■sforzandoに音源が正しく読み込まれているか
sforzandoの「SETTINGS」でUser files pathにStandard Guitar/Bassのフォルダを設定し、さらに「Standard Guitar.bank.xml」をドラッグ&ドロップしているか確認
■MIDIチャンネルの設定
sforzandoのパートと、DAWのMIDIトラックの送信チャンネルが合っているかどうか
■オーディオ出力先の確認
DAWでオーディオインターフェイスの出力に正しくルーティングされているか
以上の3つをチェックすると解決する場合が多いです。
Q. DI音源だと聞きましたが、どうやって音作りをしますか?
A: DI録音は“生の音”に近いため、そのままだとギターらしい歪みやキャビネットの響きなどが不足しています。
アンプシミュレーター(例:TONEX CSやAmpliTube 5 CSなど)を使うことで、アンプを通したようなリアルなギターやベースサウンドを作れます。無料のアンプシミュもクオリティが高いので、ぜひ組み合わせて使ってみましょう。
本ブログでは無料で使用できる高音質なアンプシミュレーター「TONEX CS」「AmpliTube 5 CS」について紹介する記事があります。こちらもご参照ください。
Q. Cakewalk by Bandlabでsforzandoを認識しない場合の対処法は?
A: 下記の設定を見直してみてください。
■Cakewalk Plug-in Manage
「ユーティリティ」>「Cakewalk Plug-in Manager」で「VSTの設定」を開いて「追加」からsforzandoをインストールしたフォルダを指定する
■フォルダパスの再検索
設定後に「VSTプラグインの検索」を再度実行
■VST2/VST3のどちらかのみ読み込まれている可能性
同名のプラグインが複数表示される場合があるので、見落としていないかチェックする
以上の3つを見直しても、うまくいかなければ一度Cakewalk by Bandlabを再起動して再検索してみると解決することがあります。
Q. Standard Guitarのキースイッチとベロシティタイプの違いは?
A: キースイッチを使って奏法を切り替えるか、ベロシティの数値によって奏法を自動で切り替えるかの違いがあります。
■キースイッチタイプ(KSOP)
ベロシティ(音の強弱)は文字通り演奏の強弱として表現できるため、表現の幅が広い
※キースイッチ操作のMIDIノートを別途入れる手間がある
■ベロシティタイプ(VSOP)
キースイッチ不要で入力がシンプルだが、強弱表現を細かくつけづらい面がある
どちらを使うかは楽曲の表現力や作業効率とのバランスで選ぶと良いでしょう。詳しい設定は当記事で解説している『3. Standard Guitarの使い方概要』を参照してください。
Q. Standard Guitarのキースイッチを使うときのポイントは?
A: キースイッチの範囲はC1周辺~G1周辺、G6~F#7周辺に割り当てられていて多岐にわたります。管理しやすい方法としては、以下が挙げられます。
■MIDIエディタのメモ機能や色分けを活用
キースイッチノートの名前や色をつけて区別するとわかりやすい
■必要な奏法だけまとめたプリセットを作る
使わない奏法が多い場合は省略することで混乱を減らせる
■楽譜作成ソフトなどでキースイッチに文字ラベルをつける
DAWやプラグインで設定できる場合もあるので確認してみる
慣れるまでは対応表を手元に置いておき、少しずつ覚えていくのが近道です。
Q. キースイッチよりベロシティタイプを使うメリット・デメリットは?
A: メリットはキースイッチの入力が不要な分、MIDIノート入力がシンプルになります。デメリットはベロシティの値が奏法切り替えに割り当てられるため、純粋な“演奏の強弱”を付けにくくなりがちです。
特にギターの微妙な強弱表現を大切にしたい場合は、キースイッチタイプのほうが自由度は高いかもしれません。短時間でデモを作りたい、あまり複雑な表現は必要ないという場合にはベロシティタイプが便利です。
Q. Standard Bassはアンプシミュレーターが必須ですか?
A: DI音源のままでも使えないことはありませんが、素の音はアタック感や深みが足りない場合が多いです。
ベース用アンプシミュレーターやEQ、コンプ(コンプレッサー)などを使うと、存在感のあるベースサウンドを作りやすくなります。無料のプラグインでもいくつか優秀なものがありますので試してみましょう。
Q. どんなジャンルに向いていますか?
A: 元のサンプルがディストーション向けに作られたイメージを持つ方もいますが、実際はクリーン系のサウンドメイクも可能なので、ポップスやR&B・ファンクなど幅広いジャンルで使えます。
エフェクト次第でどうにでも化けるのがDI録音音源の強みです。柔軟に音作りできるという点ではDI録音音源はどんなスタイルにも対応しやすいと言えます。
Q. 使用時のCPU負荷や容量は大丈夫でしょうか?
A: そこまで重い部類ではありませんが、アンプシミュレーターと組み合わせるとなるとCPU負荷が増える可能性があります。もし動作が重いと感じたら、下記を試してください。
■バッファサイズを調整
オーディオ設定でバッファサイズを少し大きめにしてみる
■プラグインの品質設定を下げる
アンプシミュレーター側で画質や音質設定を落とす(リアルタイムモードからバウンス時は高品質など)
■凍結機能(Freeze)の活用
DAWのトラック凍結機能でプラグインの処理負荷を軽減
Q. 追加で必要なプラグインやエフェクトはありますか?
A: ベースにはコンプレッサー、ギターには空間系エフェクト(リバーブやディレイ)などを加えると、より仕上がりが良くなります。
無料のプラグインでも質の高いものがあるので、まずはアンプシミュ+EQ+コンプなどの基本セットから使い込んでみましょう。
まとめ
Standard GuitarとStandard Bassは、高品質でなおかつ無料という非常に魅力的な音源です。ただしDI録音の状態なので、そのままでは「生々しい音」止まりとなります。そのためアンプシミュレーターなどのプラグインを活用してサウンドメイクを行うことがポイントになります。
またキースイッチ(KSOP)とベロシティ(VSOP)の2種類が用意されており、作業効率や表現力に応じて使い分けが可能です。設定や導入方法に疑問を感じたら、本記事のQ&Aを参考にしてひとつひとつ確認しながら導入してみてください。
これらを踏まえて、ぜひ自分好みのギター/ベースサウンドを作り上げてみましょう。