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DTM必須プラグイン:無料OTTで音圧とダイナミクスをコントロール

DTMで音圧を上げつつ楽曲のダイナミックレンジを保つことは、初心者だけでなく中級者にとっても難しい課題です。そこで活躍するのが、無料ながらパワプルなマルチバンドコンプレッサー「OTT」です。
特にEDM(エレクトロニック・ダンス・ミュージック)などのジャンルで人気のOTTは、音の厚みを増しつつ繊細な表現も維持できる優れものです。操作がシンプルなおかげでDTMにまだ慣れていない方でも扱いやすいのが魅力的。

この記事ではOTTのインストール方法から使い方、そして効果的な活用法まで初心者の方にも分かりやすく解説します。

 

1. OTTの特徴

 

OTTはXfer Recordsが開発した無料のマルチバンドコンプレッサーです。その名の通り、過激な音作りが可能でありながら、シンプルな操作で音圧とダイナミクスを両立できる点が最大の魅力です。

 
  • 強力な音圧アップ
    特にEDMで重宝される、音圧の高い迫力のあるサウンドを実現
  • 積極的な音作りに最適
    音を潰したり汚したりする効果を得意で、個性的なサウンドを演出
  • 初心者にも優しいマルチバンドコンプレッサー
    高音域・中音域・低音域の3バンドに分かれており、それぞれ独立した圧縮レベル調整が可能
    周波数帯域自体は固定されているため、マルチバンドコンプレッサー初心者でも扱いやすい
  • アップワード/ダウンワードコンプレッション
     一般的なコンプレッション(ダウンワード)に加え、スレッショルド(閾値)に満たない音量を持ち上げるアップワードコンプレッションも搭載
  • シンプルなインターフェース
    少ないパラメーターで直感的な操作が可能

 

2. インストール手順

2.1 インストール手順(Windowsの場合)

 

Xfer Recordsの公式HP(https://xferrecords.com/freeware)から使用OS(MacまたはWindows)に対応したインストーラをダウンロードします。

 

Windowsの場合は「.exe」という拡張子がついています。

 

「.exe」ファイルをダブルクリックしてインストーラを起動します。

 

指示に従って[Next][I agree]などをクリックしてインストールを進めます。
「Destination Folder」画面ではOTTの動作に必要なファイルを格納する場所を指定します。Cドライブ直下など、2バイト文字を含まないフォルダに「Xfer」などの名前のフォルダを作成して指定すると良いでしょう。

 

「Select Compoments to Install」では使用するDAWに対応したプラグイン形式(VST2, VST3, AAX)を選択します。各形式の違いは以下の通りです。

項目 説明 対象DAW
VST (Win32) 32bit版Windows向け
VSTプラグイン
32bit版のDAWソフト
例:古いバージョンのCubase・Liveなど
VST (x64) 64bit版Windows向け
VSTプラグイン
64bit版のDAWソフト
例:Cubase・Studio One・Live・FL Studioなど
VST3 最新のVST規格 VST3に対応した64bit版DAWソフト
例:Cubase・Studio One・Liveなど
AAX(ProTools x32) 32bit版Pro Tools専用
プラグイン形式
32bit版 Pro Tools
AAX(ProTools x64) 64bit版Pro Tools専用
プラグイン形式
64bit版 Pro Tools

※VST3を選択した場合、C:\Program Files\Common Files\VST3にインストールされます。

 

3. 初期設定

3.1 DAWでプラグイン呼び出しとして使用する方法

 

「OTT」はインストールしたらDAW上でプラグインとして読み込む必要があります。設定は使用するDAWで変わるため、各DAWに合った設定をしましょう。以下の記事でCakewalk by BandlabとStudio Oneでの設定方法について説明しています。

Cakewalk by Bandlabの場合

Cakewalk by BandLabではVSTプラグインの管理を「Cakewalk Plug-in Manager」というツールで行っています。そのためcakewalk by BandLabでVSTを使用する場合はこのツールをあらかじめ設定する必要があります。この記事ではCakewalk Plug-in Managerの使い方について説明しています。
 

Studio Oneの場合

Studio Oneは初心者でも使いやすく機能も多彩なDAWですが、使用する環境やデバイスに合致する環境設定が必要です。オーディオデバイスの設定、外部デバイスの認識、VSTプラグインの配置など初めての方にとってはやや複雑に感じるかもしれません。 この記事ではStudio Oneのインストール直後に行うべき基本的な オーディオデバイスの設定(使用する場合・使用しない場合) 外部デバイス(MIDIキーボードなど)の設定 VSTプラグインの設定(サードパーティー製プラグイン使用時) について説明します。 ※この記事はStudio One Professionalをベースに作成しています。Prime専&
 

 

4. OTTの使い方とパラメータ解説

4.1 画面項目

設定項目 説明
DEPTH コンプレッサー(アップワード/ダウンワード)のかかり具合を調整
最初は30%程度から始め、必要に応じて調整がおすすめ
TIME リリースタイムを調整
圧縮された音が原音に戻るまでの時間
数値が大きいほどゆっくり戻る
逆に数値が小さいと早く戻る
IN GAIN 信号の入力音量を調整
OUT GAIN 信号の出力音量を調整

 



設定項目 説明
バー スレッショルド(閾値)を調整するバー
左右にドラッグで音量調整ができる
右にドラッグすると音量が上がり、左にドラッグすると音量が下がる
ノブ 各周波数音域の圧縮する量を個別に設定(EQに相当)
H…高音域/M…中音域/L…低音域

 

設定項目 説明
UPWARD アップワードコンプレッション
トラックの小さい音をどれくらい持ち上げかの強度
DOWNWARD ダウンワードコンプレッション
トラックの大きい音をどれくらい圧縮するかの強度

 

4.2 基本的な操作手順

 

1. トラックへの挿入

OTTを使用したいオーディオトラックやMIDIトラックにインサート(直接挿す)します。通常はマスタートラックやバスなどに適用します。

 

2. Depthの調整

「Depth」で全体の圧縮量を調整します。最初は30%前後からスタートし、必要に応じて調整していきます。高すぎると音が潰れすぎる可能性があるので、注意しながら調整します。

 

3. 周波数帯ごと(H/M/L)の調整

OTTでは低音域・中音域・高音域に分かれているため、各帯域ごとに「H/M/L」を使って調整します。たとえばバストラックで低域を強調する場合、低音域(L)の値を上げて厚みのあるサウンドが作れます。
ボックス中央のバーでスレッショルドを調整して、アタック感や音圧も同時にコントロール可能です。

 

4. UPWARD・DOWNWARDの調整
「UPWARD」は音が小さい部分を持ち上げて「DOWNWARD」は大きすぎる音を抑えます。この2つを使って音のダイナミクスをコントロールし、トラック全体のバランスを取ります。

 

4.3 OTTの具体的な使用例

 
  • ドラム
    OTTはドラムトラックによく使用されます。ドラムにコンプレッサーとOTTを比較した場合、OTTはよりパワフルでパンチの効いたサウンドを作れます。

①「Depth」を50%前後に設定し、全体の圧縮具合を決定
②低域を強調したい場合は「L」を少し上げて「DOWNWARD」を調整し、不要なピークを削る
③「UPWARD」を少し高めに設定し、細かい部分も強調する

 
  • ボーカル
    OTTをボーカルに使用する際には、自然な音を保ちながらもディテールを引き出したい場合に適しています。

①「Depth」を控えめに(30%〜40%程度)設定中音域を重視して「M」で調整
②「UPWARD」を少し追加し、弱い部分を引き上げてクリアにする

 
  • ベース
    OTTをベースに適用する場合は、低音域を強調してパワフルなサウンドを作ります。

①「Depth」を40%〜60%に設定し、全体の厚みをコントロールする
②「L」を上げて低音域を強調しつつ「DOWNWARD」でピークを適切に抑える