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無料で高音質!TDR Nova EQの使い方【初心者向け完全ガイド】

Tokyo Dawn Recirdsの「TDR Nova」は、パラメトリックEQ(通常のイコライザー)とダイナミックEQの機能を1つに組み合わせたフリープラグインです。

ダイナミックEQの特徴的な点は、動作開始の基準となる音量レベル(スレッショルド)を超えたときにブースト(強調)またはカット(減衰)してくれるというところです。
スレッショルド以下の音量の場合はEQは効かず、スレッショルドを超えた音量の場合だけEQが効くように設定できるので、音の自然な変化を保ちながら問題部分をピンポイントで調整できるメリットがあります。

 

この記事ではTDR Novaの使い方を解説します。パラメトリックEQとダイナミックEQの融合による精密な音作りを、インストール手順から豊富なプリセットと共に紹介しています。

 

1. TDR Novaのインストール手順

1.1 インストーラーのダウンロード

 

インストーラーがある公式HP(以下のURL)へアクセスします。

 

使用するOS(WindowsまたはMac)をクリックしてインストーラーが入った圧縮ファイルを入手します。

 

利用承諾のページが表示されるので「Accept and download」をクリックします。

 
 

ここからはWindwosの場合を例にして進めていきます。
ダウンロードした圧縮ファイルを解凍ソフトで解凍してこの後インストーラーを使える状態にします。

 

1.2 インストール

 

インストーラーを起動後、画面の指示に従いながらインストールします。インストール先のフォルダを変更したい場合には「Browse...」をクリックした後でフォルダを指定してください。
インストール完了後の「Finish」をクリックしてウィンドウを閉じます。

 

2. DAWでプラグイン呼び出しとして使用する方法

 

インストールした「TDR Nova」は、DAW側のプラグイン検索リストに含めると利用できます。そのための設定は使用DAWによって変わるため、DAWにあった設定をしてください(下記の記事ではCakewalk by BandlabとStudio Oneでの設定方法をまとめています)

Cakewalk by Bandlabの場合

Cakewalk by BandLabではVSTプラグインの管理を「Cakewalk Plug-in Manager」というツールで行っています。そのためcakewalk by BandLabでVSTを使用する場合はこのツールをあらかじめ設定する必要があります。この記事ではCakewalk Plug-in Managerの使い方について説明しています。
 

Studio Oneの場合

Studio Oneは初心者でも使いやすく機能も多彩なDAWですが、使用する環境やデバイスに合致する環境設定が必要です。オーディオデバイスの設定、外部デバイスの認識、VSTプラグインの配置など初めての方にとってはやや複雑に感じるかもしれません。 この記事ではStudio Oneのインストール直後に行うべき基本的な オーディオデバイスの設定(使用する場合・使用しない場合) 外部デバイス(MIDIキーボードなど)の設定 VSTプラグインの設定(サードパーティー製プラグイン使用時) について説明します。 ※この記事はStudio One Professionalをベースに作成しています。Prime専&
 

 

3. TDR Novaの使い方

3.1 画面説明(メインディスプレイ①)

 

項目 説明
周波数特性 周波数(Hz、対数スケール)
ゲイン エフェクトのかかり具合(dB)
スペクトルアナライザー スペクトルアナライザーに表示する信号を選択

In:
プラグイン入力前のオーディオ信号を表示
Out:プラグイン処理後のオーディオ信号を表示
SC:サイドチェーン信号を表示
Off:アナライザーを無効
バンドハンドル EQバンドのパラメータ(周波数・ゲイン・Q値)を操作
位置によってカーブが変化

 

3.2 画面説明(メインディスプレイ②)

 

項目 説明
プリセット 周波数とQ値があらかじめ設定されたもの
13種類ある中のどれかを選択
A/B比較 A B:
AとBで異なる2つの設定を比較
A>BまたはB<A:
設定をもう一方にコピー
メインディスプレイ
ON/OFF
メインディスプレイを表示または非表示
品質処理モード プラグインの処理負荷と精度を調整する機能

Eco:
内部帯域幅が約100kHzのエコ仕様(CPU負荷軽減向け)
Precise:
内部帯域幅が約200kHzの標準設定(バランス)
Precise+:
Preciseに内部非線形性を追加(アナログ的なサウンド処理)
Stereo オーディオ入力信号の処理方法を選択

Mono:
プラグインホストのチャンネル設定に関係なく、モノラルとして処理
Stereo:
左右のチャンネルが一緒に処理される、標準的なステレオ処理
Sum:
ステレオ信号の中央の音を処理するMid処理で使用
ボーカルやドラムなどの調整向け
Diff:
ステレオ信号の左右両端の音を処理するSide処理で使用
音の広がりや残響音などの調整向け
Left:
左チャンネルのみ処理(右チャンネルは未処理)
Right:
右チャンネルのみ処理(左チャンネルは未処理)
Dual Mono:
左右の音質差が大きい場合や、定位を細かく調整したい場合に便利な機能
サイドチェーン 他のトラックの音を使用してエフェクトのかかり具合をコントロールする機能

Int SC:

同じトラックの音でコントロール
Ext SC:
別のトラックの音でコントロール
Int SC(Flat):
同じトラックの音をフィルターなしでコントロール

 

3.3 画面説明(操作パネル①)

 

項目 説明
バンド選択/有効化 操作するバンド(Ⅰ~Ⅳ)を選択
ONでバンドの有効無効を切り替え
バンドソロモード 選択したバンドまたはバンドのグループの効果を表示
ORDER BY FREQ バンドを周波数順に並べ替え
EL BYPASS プラグインの効果を一時的にON/OFFにする
EL BYPASSの特徴はON/OFFを切り替える際に、音量の急激な変化を防止する
プラグイン効果をより正確に判断するときに役立つ
GR DELTA ONにすると音量調整の効果だけ聞こえる

 

3.4 画面説明(操作パネル②)

 

項目 説明
HP/LP HP(ハイパスフィルター)
設定した周波数より低い周波数を減衰
LP(ローパスフィルター)
設定した周波数より高い周波数を減衰

※穏やかにカットしたい場合はSLOPEの値を小さくし、急激にカットしたい場合はSLOPEの値を大きくする
Q/FREQ Q(Quality Factor)
フィルターの帯域幅を設定
FREQ(Frequency)
フィルターの中心周波数を設定
ゲイン/
スレッショルド
GAIN
音量レベルの調整
THRESHOLD
ボタンをONにすると、選択したバンド(Ⅰ~Ⅳ)がダイナミクスEQになる
ノブで設定した数値以上の信号のみゲインが適用される
青いメーターはサイドチェーン信号のレベル
RATIO
音の圧縮率を調整するパラメータ
入力信号のレベルの変化量に対する、出力信号のレベルの変化量の比率
ATTACK
音が鳴り始めてから効果がかかり始めるまでの時間
RELEASE
音が鳴り止んでから効果が切れ始めるまでの時間
出力設定 EQ GAIN
フィルターによる音量変化を自動的に補正する機能
DRY MIX

原音とエフェクト処理した音のミックス比率
OUT GAIN
プラグインの出力レベル調整

 

4. プリセットの説明

 

TDR Novaには多様な音作りを可能にするプリセットが豊富に用意されています。以下の表はプリセットの効果と具体的な使用例をまとめています。

プリセット 対象楽器
トラック
効果 使用例
Default 全般 何も処理を加えていない状態
TDR Novaの初期設定
ミックス開始時
リファレンスとの比較
Minimum 全般 音質変化を最小限に抑えてプラグインのCPU負荷を最小限にする
原音に忠実なサウンドを保持しつつ、処理負荷を軽減
ライブ演奏
CPU負荷を抑えたい場合
Wideband Dyn ドラム
ベース
ミックス全体
ミックス全体にパンチ・密度感を与える
音量増加にも効果的
ロック
EDM
ヒップホップなど
迫力のあるサウンド
1 Band Dyn ボーカル
ソロ楽器
特定の周波数帯域
特定の周波数帯域のダイナミクスを制御
ボーカルの明瞭度を上げたり、ギターの特定の周波数の共振を抑えたりする
ボーカル明瞭度向上
ギターの共振抑制など、ピンポイントでの音作り
2 Band Dyn ミックス全体
ギター
ボーカル
2つの周波数帯域を個別に処理し、バランスの取れたサウンドに仕上げる アコースティックギターの音量バランス調整
ボーカルの明瞭度向上など、複数の楽器のバランス調整
3 Band Dyn ボーカル
ドラム
ミックス全体
3つの周波数帯域を個別に処理し、より細かいダイナミクス制御を行う ボーカルダイナミクス処理
ドラムの迫力向上など、より高度な音作り
4 Band Dyn マスタリング
複雑なミックス
4つの周波数帯域を個別に処理し、精密なダイナミクス制御を行う マスタリングの音圧調整
ミックスの明瞭度向上など、プロレベルの音作り
LF Density ベース
キックドラム
低音域の厚みを加えて迫力のあるサウンドにする EDM
ヒップホップなど
低音重視の音楽
Edge Density マスタリング
リード楽器
高音域と低音域を強調し、サウンドに輝きとパンチを与える ロック
ポップスなど
メリハリのあるサウンド
Mid Focus ボーカル
ギター
スネアドラム
中音域の強調して音を前に出す ボーカルの明瞭度向上
ギターの存在感向上など、楽器を目立たせる
HF Density シンバル
ハイハット
ボーカル
高音域に密度感や空間の広がりを与える アコースティック音楽
シンバルのきらびやかさなど、繊細な表現
De-ess (split) ボーカル 歯擦音(サ行やシ行の発音に含まれる耳障りな高い音)を抑え、クリアなボーカルにする ボーカル録音
ナレーション
De-ess (linked) ボーカル 自然な音質を保ちながら歯擦音を抑える コーラスなど、複数のボーカルトラック

 

4.1 Default:何も処理を加えない初期状態

 

DefaultはTDR Novaの初期状態のプリセットです。EQ・ダイナミクス処理・フィルターなど、すべての機能が無効化されており、入力信号は何も処理されずにそのまま出力されます。

用途例

  • プラグインの基本動作確認
  • 他のプリセットとの比較
  • 音作りをゼロから始める際の出発点

 

4.2 Minimum:レイテンシーを最小限に抑えたワイドバンド処理

 

MinimumはCPU負荷とレイテンシーを最小限に抑えつつ、ワイドバンドのダイナミクス処理を行うための設定です。EQバンドは無効化されており、ワイドバンドのダイナミクス処理のみが有効です。

 

4.3 Wideband Dyn:広帯域にわたるダイナミクス制御

 

Wideband Dynでは特定の周波数帯域ではなく、信号全体の音量を調整して過度なピークを抑えながら音量差を小さくします。

用途例

  • マスタリング:
    ミックス全体のダイナミクスを調整し、過度なピークを抑えながら音量を均一に保つ
  • ミックスバス:
    ドラムやベースなど、低音から高音まで均一にコンプレッションをかけることで、ミックス全体のまとまりを出す
  • ライブ音源:
    ライブ録音での全体の音圧やバランスを調整し、リスナーに一貫した音量を提供する

 

4.4 1 Band Dyn:特定の周波数帯域を強調・制御する単一バンドのダイナミクス処理

 

1 Band Dynは、ひとつの帯域に対してダイナミクス処理をするプリセットです。特定の楽器の音量を上げ下げしたり、音質を変化させたりする際に使います。特定の楽器やボーカルの音を前面に出す、または不要なピークを抑える際に有用です。

用途例

  • ボーカル:
    ボーカルの中音域を強調して、ミックス内でより際立たせる
  • 楽器ソロ:
    ギターやピアノのソロパートで、特定の帯域を強調させて存在感を持たせる

 

4.5 2 Band Dyn:2つの周波数帯域を個別に制御し、サウンドバランスを調整

 

2 Band Dynは、2つの異なる周波数帯域を個別に制御するときに使えるプリセットです。異なる帯域で別々の処理を行うことで、全体のサウンドバランスを調整しやすくなります。特にミックス全体でのバランス調整や、楽器間の干渉を避ける際に役立ちます。

用途例

  • ギター:
    中音域を少し押し出して低音を抑えて他の楽器と干渉を防ぐ
  • ベース:
    低音を強調しながら不要な高域のピークを抑えてミックスに安定感を与える

 

4.6 3 Band Dyn:3つの周波数帯域を個別に制御し、複雑なミックスやドラムに最適

 

3 Band Dynは、3つの異なる周波数帯域を個別に制御するときに使えるプリセットです。より細かいサウンド調整ができるため、複雑なミックスやドラムキット全体のバランス調整に適しています。

用途例

  • ドラム:
    バスドラム・スネア・ハイハットなどの異なる音を個別に調整し、全体的なドラムのバランスを取る
  • ボーカル:
    低音をカットして中音域を強調しつつ高音の歯擦音を抑え、力強くてクリアなボーカルサウンドを生成

 

4.7 4 Band Dyn:4つの周波数帯域を個別に制御し、精密なバランス調整を実現

 

4 Band Dynは、4つの異なる周波数帯域を個別に制御するときに使えるプリセットです。広範囲にわたる帯域を細かく調整することで、ミックス全体のバランスを精密にコントロールすることができます。特に複雑なミックスやマスタリングで使用するのに役立ちます。

用途例

  • マスタリング:
    楽曲全体の周波数バランスを調整して特定の帯域を強調または抑制し、楽曲全体をまとまりのあるサウンドに仕上げる
  • 複雑なミックス:
    各帯域の楽器や音源を個別に調整して干渉を最小限に抑えながらクリアなミックスを作成

 

4.8 LF Density:低音域を強調し、重厚感と厚みを加える

 

LF Densityは低音の密度をアップさせたいときに使えるプリセットです。低音を強調することでミックスに重厚感や厚みを加えることができます。特に低音楽器や低域が重要なトラックに効果的です。

用途例

  • ベース:
    低音を強調してミックス内でベースをより存在感のあるものにする
  • ドラム:
    キックドラムの低音を強調してリズムセクションに力強さを加える

 

4.9 Edge Density:高音と低音を強調し、アタック感とクリアさを付与

 

Edge Densityは高音と低音を強調するときに使えるプリセットです。ミックスにエッジを加えたいときや、音の立ち上がりを強くしたり音をハッキリさせたいときに使います。

用途例

  • リード楽器:
    ギターやシンセなどのリード楽器の存在感を出させてミックス内で際立たせる
  • マスタリング:
    楽曲全体に高音と低音を強調てエネルギーと明瞭さを持たせる

 

4.10 Mid Focus:中音域を強調し、ボーカルや主要楽器を際立たせる

 

Mid Focusは中音域を強調させたいときに使えるプリセットです。ミックスの中で重要な中域帯域を強調させてボーカルや主要楽器を前面に押し出すことができます。

用途例

  • ボーカル:
    ボーカルの中域を強調して他の楽器と分離させ、明瞭に聴こえるようにする
  • ギター:
    ギターの中音域を強調させてミックス全体での存在感を増す

 

4.11 HF Density:高音域の密度を上げ、鮮明さと輝きを与える

 

HF Densityは高音の密度をアップさせたいときに使えるプリセットです。高音を強調させてミックスに鮮明さや輝きを加えることができます。特にシンバルやハイハットなどの高音楽器や、ボーカルのクリアさを際立たせたいときに効果的です。

用途例

  • シンバル:
    シンバルの高音を強調させ、ミックス内でよりクリアかつ存在感を持たせる
  • ボーカル:
    ボーカルの高音を持ち上げてクリアで明瞭なサウンドを作り上げる

 

4.12 De-ess(split):歯擦音を自然に抑制

 

De-ess(split)は歯擦音を抑制するプリセットです。特定の周波数帯域で歯擦音を削減して自然なサウンドを維持しながらボーカルをクリアにします。特にボーカルトラックで「S」や「T」音が目立ちすぎる場合に使用します。

用途例

  • ボーカル:
    ボーカルトラックの歯擦音を抑え、耳障りな高音を軽減させる

 

4.13 De-ess (linked):複数のバンドをまとめて歯擦音を抑制

 

De-ess (linked)は複数のバンドをリンクさせて歯擦音を全体的に抑えるプリセットです。複数の帯域を連動させることで、バランスの取れたサウンドを保ちながら歯擦音を抑制します。複数のトラックや広帯域で一貫したデエッシングが必要な場合に最適です。

用途例

  • ボーカル:
    複数のボーカルトラックで統一感を保ちながら歯擦音を抑制させ、全体的にクリアなボーカルサウンドを作り出す